転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


572 いつもとおんなじなのに違うって意地悪言うんだよ



「ええっ!? ルディーン君、マロシュさんの事、知っているの?」

 僕がお薬屋さんを見てマロシュさんのお店だって言ったらね、それを聞いたアマンダさんはすっごくびっくりしたんだよ。

 でも僕、久しぶりに来たマロシュさんのお店を見て、そんなアマンダさんをほったらかしにして思わず走り出しちゃったんだ。

「あっ、待って!」

 でね、そのまんまお店の前まで行くと、

「こんにちわ!」

 入り口のドアを開けて、元気にご挨拶したんだよ。

「ん? おお、フランセン老のところのストールさんが連れて来た、いつぞやの坊やじゃないか」

「あっちっちゃいおじさん、いた!」

 そしたらお店の奥の方にマロシュさんがいて、僕に向かってにっこり笑ってくれたんだよ。

 だから僕、マロシュさんのとこにテッテッテって走ってったんだ。

「今日はストールさんと一緒じゃないのかい?」

「うん。今日はね、アマンダさんと一緒に来たんだよ」

 僕が前に来た時はストールさんが馬車で連れて来てくれたでしょ?

 だからマロシュさんは、今日もおんなじようにロルフさんちからストールさんと一緒に来たって思ったみたい。

 でも今日はアマンダさんに連れられてきたから、違うよって教えてあげたんだ。

 そしたらね、それを聞いたマロシュさんは、

「アマンダ? そんなメイド、フランセン老の所に居たっけか?」

 アマンダさんなんてメイドさん居たっけ?って、頭をこてんって倒したんだよ。

 だから僕、ロルフさんに違うよって教えてあげようとしたんだけど、

「もう! ルディーン君、いきなり走り出したりしたらダメじゃない」

「あっ、アマンダさんが来た!」

 アマンダさんがドアを開けて入ってきたもんだから、それを見たマロシュさんは両手をぽんって合わせたんだ。

「ああ、菓子屋の」

「こんにちは、マロシュさん」

 マロシュさんはね、僕が言ってるのはロルフさんちのメイドさんじゃなくって、お菓子屋さんのアマンダさんだって解ったみたい。

 でもね、すぐにあれ? ってお顔になって、アマンダさんにこう聞いたんだよ。

「この子はフランセン老とゆかりのあるグランリルの村の子だと記憶しているんだけど、何故お菓子屋のアマンダさんがこの坊やを連れているのかな?」

「ああそれはですね、この子がお菓子作りにも精通していて、その縁でつながっているからですよ」

 アマンダさんはね、お店で出した居るお菓子の中には僕から教えてもらったものもあるんだよってマロシュさんに教えてあげたんだ。

 そしたらそれを聞いたマロシュさんは、本当なの? って。

「アマンダさんのところのお菓子屋は、この街でも1・2を争うほどの有名店だぞ。その店に出せるほどの菓子を、この坊やが作ったって言うのか?」

「ええ。それどころか、私もまだ教えてもらっていないお菓子があるみたいで」

 僕ね、ノートンさんやカテリナさんにポップコーンとかメレンゲで作ったクッキーとかの作り方を教えてあげた事あるでしょ?

 ノートンさんたちはそのお菓子をロルフさんに出す前に、ちゃんと作れるか試作して毎回イーノックカウの僕んちに勉強しに来てるメイドさんたちに食べてもらってるんだって。

 アマンダさんはね、そのお話をメイドさんたちから聞くたびにいいなぁって思ってたんだよて教えてくれたんだ。

「何で? アマンダさんはお菓子屋さんなんだから、ノートンさんに作り方を聞いて作ってみればいいのに」

「いやいや、流石にフランセン家の料理長に作り方を聞きに行くなんて、恐れ多くてできるはずないわよ」

「確かに、それは流石にハードルが高すぎるな」

 ロルフさんちの料理長にそんなの聞けないよねって、アマンダさんとマロシュさんは二人でうんうん頷いてるんだよ。

 でもそっか。

 そう言えばロルフさんちって、すっごいお金持ちだもん。

 そんなお家まで行ってそこの料理長さんにお菓子の作り方を教えてくださいなんて、普通は頼めないよね。

「じゃあさ、後でケーキの作り方を教えてあげる時に、いっしょに教えてあげるよ」

「本当? ありがとう、ルディーン君」

 そう思った僕が後でケーキの作り方と一緒に教えてあげるよって言ったらね、それを聞いたアマンダさんはありがとうって言いながらにっこり笑ってくれたんだ。


「ところで、いっしょにいる理由は解ったけど、今日は何故ここに? 偶然通りかかったって訳じゃないんだろ?」

「ええ、実は相談したい事があって」

「相談?」

「ええ、実は熟成スキルについて解らない事がありまして」

 アマンダさんはマロシュさんに、熟成のスキルの事で聞きたい事があるんだよって相談したんだ。

 そしたらね、それを聞いたマロシュさんはちょっとあきれたようなお顔になって、何で僕に? って。

「あのね、僕は薬屋だよ? スキルの専門家じゃないんだから、そんな事を聞きに来られたって答えられるはずないじゃないか」

「ええ、それは解ってますよ。でも、他に頼れる人がいなくって」

「それにしたって」

 倒られたって困るよってマロシュさんは言うんだけど、アマンダさんは熟成させた果物を見て感想を言うだけでいいんですって頼んだんだ。

「マロシュさんは、食品や薬草の状態を見る事ができるでしょ? だから私とルディーン君が熟成させたものを見比べて、それがどう違っているかだけでも教えてもらいたいんです」

「そうなの? う〜ん、まぁそれくらいなら別にいいけど……」

 マロシュさんはちょっと困ったようなお顔をして、でも最後にはそれくらいならいいよって頷いてくれたんだ。


「今のところ一番違いが出るのは、アマショウの実を熟成させた時みたいなんです」

 アマンダさんはマロシュさんにそう説明しながらアマショウの実をひと房かごから取り出すと、そこから3本実をちぎってテーブルの上に置いたんだよ。

 でね、そのうちの一本の皮をむいてから、それをお皿の上にのっけたんだ。

「見本として、何も手を加えていない実を置いておきますね。ルディーン君、これを丁度いい美味しさになると思うくらいまで熟成させてくれる? 私はこっちのを熟成させるから」

「うん、いいよ!」

 僕はアマンダさんからアマショウの実を受け取ると、早速それに熟成をかけてったんだよ。

 でね、それがちょうどいいくらいになったなぁって思ったところでやめて、アマンダさんにできたよって渡したんだ。

「ありがとう、ルディーン君。それではこの2本もむきますね」

 アマンダさんはそう言って僕が熟成したのと自分で熟成させたのを2本とも皮をむいて、さっき置いた何にもしてないアマショウの実の横に置いたんだよ。

 そしたら僕の熟成させたのは何にもしてないのとおんなじ真っ白だったのに、アマンダさんが熟成させたのは黄色くなってたもんだから、僕、すっごくびっくりしたんだ。

「わぁ、ほんとに黄色くなってる!」

「う〜ん。私としては、ルディーン君が熟成させたものが全く変色していない事に驚いてるんだけど」

 アマンダさんはね、僕が熟成したのもちょっとくらいは黄色くなるんじゃないかなぁって思ってたんだって。

 でも何にもしてないやつと並べても、どっちがどっちか解んないくらい両方とも真っ白なんだもん。

 だからほんとに白いまんまなんだねって、アマンダさんはちょっとびっくりしたお顔で笑ってるんだ。

「確かに色だけを見るとルディーン君がやった方は、本当に熟成しているのかどうかすらわからないね」

 それはどうやらマロシュさんもおんなじだったみたいで、こんなこと言いながらお皿にのってる甘所の実をじーっと見てたんだよ。

 でね、僕が熟成させたのの端っこをちょびっとだけ追ってパクリ。

 そしたらさ、すっごくびっくりしたお顔になっちゃったんだ。

「これは凄い。アマショウの実は、これほど甘くなるものなのか」

「えっ、ちょっといいですか?」

 僕の熟成させたのを食べたマロシュさんがすっごくおいしいって言ったもんだから、アマンダさんもちょびっとだけちぎってパクリ。

「これは……確かに美味しいですね」

「ああ。今までに何度も完熟したアマショウの実を食べた事があるけど、これほど甘い物には僕も出会った事は無いよ」

 そしたらアマンダさんまで、すっごくおいしいって言うんだもん。

 だから僕、もしかしたらお店で買ったアマショウの実がすっごくおいしい奴だったのかも? って思ったんだ。

「じゃあ、僕も!」

 って事で、残ったのをパクリ。

 でもね、

「あれ? いつものとおんなじだよ」

 食べてみたら村で食べてるのとおんなじだったからびっくりしたんだよ。

 でもね、すぐに気付いちゃったんだ。

 アマンダさんとマロシュさん、僕に意地悪してる!

 いつもとおんなじなのに、すっごくおいしいなんて変だよね。

 なのにあんなにびっくりしたフリするなんて、僕に意地悪してるに違いないんだ。

 だから僕、コラーって怒ろうとしたんだよ。

 でもね、

「ルディーン君。君、どれだけ強く熟成をかけたんだい?」

「ああ、そうか。ルディーン君の熟成は素材の劣化が無いから、もしかしたら私よりはるかに強く熟成をかけている可能性もあるんですね」

 マロシュさんとアマンダさんがすっごいお顔で僕にどうやったの? って聞いてきたもんだから、なんだか怖くなって何にも言えなくなっちゃったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。

 ああ、書いてみたらプロットの半分の行かないうちにいつもの文字数に。

 本当ならちゃんとした引きを考えていたんですけど、そこまで行こうと思うとさらに2000文字くらい行きそうな雰囲気。

 というか、下手をすると次回の引きになりかねないなぁと戦々恐々な私です。


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